ほのぼのオカルト 300字小説
約束
幼い頃、僕には仲の良い友達がいた。おかっぱ頭の女の子。両親が共働きで、家に一人でいることの多かった僕はいつもその子に遊んで貰っていた。しかし。
『転勤で引っ越すことになったんだ』
『また会いに来るから、これを貸しておくね』
突然の別れに僕はお気に入りのぬいぐるみを再会の約束と共に、その子に渡した。
「それ、座敷童子じゃない?」
その時、引っ越した家に移り住んだ僕に妻が言う。
「結構、乱暴な子だったし、そんな良いモノかなぁ?」
首を捻る僕の頭に何かがぶつかる。振り向くとあの時のぬいぐるみ。
「おかっぱの女の子が怒っているよ」
娘が僕の後ろを指す。
「りふぉーむとやらに耐えて待っていたのに、その言い草はなんだ! って」
お題「突然の別れ」
5/19/2023, 12:07:26 PM