成り損ない

Open App

「どうして」

どうして、君が。そんな言葉が溢れた。

目の前で血飛沫を上げて倒れたのは、他ならない己の恋人だったもの。

暗闇だと言うのに、ほんの一瞬の銃口の光が写した。
その瞬間、引き金の先にいたのが誰だか分かってしまった。

ワンピースが似合う素朴な……弾丸が飛び交うような戦場には到底、似つかわしくない柔な人だった。

だと言うのに、何故自分が追っている敵と同じ服を着ているのだ。

いや、分かっているだろう?

そんな声が聞こえる。

突きつけられる様に、はっきりと理解する。

ああ、そうか。


君も同じ、裏切り者だったんだ。
僕がスパイだった様に。

だからこそ、言い聞かせよう。

「どうして、か。どうしても、だから」

君を守れると思っていた、任務には、どうして、だけが木霊した。

1/14/2024, 2:30:22 PM