『突然の君の訪問。』 ノンフィクション
ああ、思い出しました。中学二年生の頃。
あなたが電話越しに、自殺を仄めかすものですから。
ぼくは夜の20時過ぎに、風呂上がりで髪も乾かさず、あなたの家に行きましたね。
自転車で十分間。十二月。
馬鹿みたいに寒かったんですよ。
チャイムを鳴らすと、あなたが出てきました。何かと厳しいあなたの両親は、片方は入浴中で、片方は仕事でしたね。
もし扉を開けて出てきたのが母か父かなら、ぼくたちは二人まとめて怒られていたでしょうね。
「ごめん。冗談の、つもりだった」
泣きながらやってきたぼくに、あなたは謝りましたね。
あなたがぼくを見て直ぐに謝った理由くらい、分かりますよ。ぼくが怒っていたからでしょう?
嘘でも「冗談」なんて言えばぼくがもっと怒るとは、思わなかったんですか。
冗談ではないことも、ぼくにはバレバレでしたよ。
あなたが自傷行為をしていること、ぼくが一番初めに気がつきましたよね、そういえば。
ぼくはお前のリスカとODについて、
「したいならすればいいんじゃねーの」
とまるで興味のなさそうに言いました。
あなたがぼくに求めていたのは「そんなことやめろ」なんて言葉ではなかったのでしょう?
そんな自分でも友人でいて欲しかったのでしょう。
バレバレですよばーーーーーーーーか。
あなたの家に行った夜の、次の日でしたね。
ぼくはお前を一発殴りましたね。力のないぼくのグーですから、あまり痛くはなかったはずです。
クソッタレなお前は殴られても笑ってたから、今回は止めて欲しかったんだなって。
そんなお前に一月前、ぼくは言いましたね。
「高校卒業までに、死ぬのが目標」
仮にぼくがあなたに電話で自殺を仄めかすことがあったとしても、あなたはぼくの家には駆けつけてくれないでしょうね。
その代わり、気持ち悪いくらい電話をよこすのでしょう?
ぼくはお前の考えていることは、大体わかります。
お前もきっとそうなんだろうな。
「お〜、死んでみろよ止めてやるから」
ぼくらはよく似てるから、お互いに引けませんね。
お前にだけは絶対に負けたくないので、絶対に死んでやりますよ。
ぼくには負けたくないのでしょうどうせ。何かと張り合ってくるお前のことですから。
ぼくが居ないとお前の人生は一気につまらなくなるでしょうから、まあ、止めたいなら止めておけばいいんじゃないんですか。
馬鹿野郎、別に止めて欲しいわけじゃないです。
8/28/2024, 1:22:59 PM