「師匠、どうしたの〜?」
その声で、私は目を覚ました。
下から聞こえた声に視線をやると、少女が私の服の裾を握っていた。
水色髪に、餅の様なとろけた顔をした彼女は、心配そうにこちらを見つめ返している。
「ううん、何でもないよ。ここは…」
「師匠、寝ぼけちゃったの?
お部屋だよ、師匠のお部屋!」
周囲を見渡すと、確かにそこは私室だった。
深茶色の木材で構成された、暖かみのある洋風の室内。
しかし、何度も頭を回転させても、己が何故部屋にいるのか、何故彼女が居るのか、その理由が分からない。
「ところでなんだけど、なんで…」
彼女の名前を呼ぼうとした
何故か、なぜか、その名前が思い出せない。
「?」
彼女は、少女であるその子は、頭を傾けた。
確かに大切な存在だったはずなのに。他の何を捨ててもこの子は、この子達は、
育てなければならない、弟子の筈なのに。
そうしなければ、私の生存最低条件が、満たされなかった筈なのに。
私が心の中で、自問自答をしているうちに、部屋の外から騒がしい声が聞こえてきた。
それは複数の少年達の声で、細かい会話こそ聞こえないが、仲が良いことだけは伝わってくる。
「みんなだ〜!師匠、ちょっと待っててね!」
少女は裾を離し、扉へと駆け寄る。
廊下から聞こえる声は
確かに私の、大切な存在。弟子達のはずだ。
なのに、なのに
分からない、思い出せない!!
少女が、扉の持ち手を握る。
そして、その扉を開く。
何気なく、一瞬で終わるはずのその動作が、
まるでスローモーションのように見えた。
「やめて、やめてくれ!」
扉が開いた
夢が 醒めた
お題『夢が醒める前に』
3/21/2026, 4:01:06 AM