れもん

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揺れる木陰

小学生の時に読んだ物語で印象に残っている本がある。
「さいごのまほう」という物語だ。
細かいところは覚えていないが、
年老いた魔法使いのおばあさんが、
残り何度かしか魔法が使えなくなる。
おばあさんは、最後の魔法を使って、
何かに変身しようと考える。
色んな動物なんかに変身してみるけれど、
どうもしっくりこない。
そんな中出会った心優しい少年、
最後の魔法を使って、
おばあさんはその子が休むためにベンチになる。
そんなストーリーだった。

この話を子供の頃に読んだ時、
おばあさんが物凄く可哀想だと感じた。
これからベンチとして生きていくだなんて、
どこにも行けないし、誰かと話すこともできない。
ただじっと木陰に佇むだけのベンチになるなんて、
私ならそんな孤独は耐えられないし、
毎日後悔ばかりするだろうと思った。

しかし、おばあさんは、
少年の「明日もまた来よう」という言葉を聞いて、
少年が明日も来てくれるということに、
嬉しさを感じて、楽しみに待っている。
幸せを感じている。

もし、私がベンチになっていたら、
揺れる木陰を見上げては、孤独と寂しさを感じるだろう。
木々の揺れる音が、泣いているように聞こえるだろう。
でもきっとこのおばあさんは、
揺れる木陰を見上げては、優しい気持ちになるんだろう。
木々の揺れる音が、笑っているように聞こえるだろう。

何事にも言えることだけど、
同じ場面で同じものを見ても、
きっと全然違うふうに見えている。

7/17/2025, 8:42:25 PM