あ、雨だ。そう思う間もなく急に本降りになった。周りの人たちがカバンを頭の上にかざして慌てて駆けていく。そんな中私は1人何もせずただぼんやりと歩いている。髪が濡れ服が重くなり靴に水が溜まっていく。周りの人から奇特な目で見られながらも特にあてもなく歩いていく。
今日は第一志望校の合格発表の日だった。電車を乗り継いでたどり着いた学校の掲示板に私の名前はなかった。名前がないことがわかった時、私は思わず走り出していた。個人的には自信はあった。自己採点は過去最高だったし、面談も手応えはあった。でも、駄目だった。何もかもが嫌になったものの、死ぬのは怖かった。だから私は今迷い子のように歩いている。土地勘がないのもちょうど良かった。何を気にするでもなく歩いていくことができる。
5分ほどそのまま歩き続けただろうか。喉が渇いて目の前にあった喫茶店に立ち寄った。結論から言えばこの選択は正しかった。小さな個人経営のマスターはびしょ濡れでやってきた私を拒むでもなく受け入れてくれた。タオルで拭いたあとオススメだというオリジナルブレンドを片手にしばらくの間話し続けた。彼は時に相槌をうち、ときに自分の体験を話してくれた。たった1杯のコーヒー分の時間だったが気分はだいぶ持ち直した。お会計を済ませたあと彼は言った。「あなたの人生はまだまだ長い。これがあなたの進むべき道だったと思ってその道で頑張りなさい。またのご来店をお待ちしております。」
私はお礼を言い、店を後にした。「また来よう。」あれだけ降っていた雨はあがっていた。
9/27/2024, 12:41:05 PM