お題「愛と平和」
記憶とは完璧な物ではない
自分の記憶が全て正しいと言えるだろうか?
いいや、正しいと認識してる記憶でさえ、過去に戻って記憶を見てみればそれは偽記憶だった可能性もある。
長い時間は自分の記憶を自分自身無意識に美化して変えていっていまうのだ。
そして変わってしまった記憶は世界の誰も気付けない。
「僕の命と世界の平和、君はどっちを選ぶ?」
目の前に立つ少年が問いかけてきた。
とても不思議な光景だった。
足首ほどの高さに浮いている少年は、体全体が半透明で後ろの景色が透けて見える。
「私は…」
とっさに答えは出せなかった
それもそのはず
問いかけられた少女は、少年の名前すら知らない。
言ってしまえば赤の他人
誰だって初対面でこの質問をされたら困惑するだろう。
「えっと、あなたのお名前は?というか人間ですか?」
少し考えて質問には答えず逆に問いかけてみた。
少女はなにより、少年の名前とその存在の方が気になってしまった。
「僕の命と世界の平和、君はどっちを選ぶ?」
「え?」
少年の返答が予想外すぎて目を白黒させた。
一瞬聞き間違いかと思い、少年に再度同じ問いをした。
「あのー、あなたの名前を教えて下さい」
「僕の命と世界の平和、君はどっちを選ぶ?」
聞き間違いじゃない
少年は同じ言葉を繰り返してる
なんで?
少女は脳内は少年に対しての疑問でいっぱいになった
なんでそんな問いを私にしてくるの?
名前は?あなたは誰?
少女は両手を頭に置き悶々としていた
その時気づいた。
「みんな固まってる?」
少女の目に映るのは、羽を羽ばたかせながら空中で止まってる鳥、今にも一歩踏み出しそうな男性、廃棄ガスを撒き散らしながら走る車。
見るもの全てが止まっていた。
動いているのは、目の前の少年と私だけだ。
「どうし、て?」
この空間はまるで、世界に少年と少女の2人しか存在しないような。
少女は少年の顔を凝視してみた
目は虚で光は無い、顔も少し青白くみえる。
「僕の命と世界の平和、君はどっちを選ぶ?」
またこの問いだ
この状況に加え、少女にとって訳の分からない問いに更に困惑した。
「でも彼の顔どこかで」
少しの違和感に次の瞬間、少女は半分無意識に少年に向かって叫んでた。
「私は世界の平和より、あなたの命の方が大事!あなたを選ぶ!」
その瞬間世界は真っ白になった。
完
3/11/2023, 4:15:35 AM