「ルール」
「最近の人間どもは図に乗っている」
退屈による涙が頬杖をしている左拳を濡らす。
もう片方の手でミニチュア状の地球を回し、眉間にシワを寄せ人間の動向を観察している。
「見たところ平和ボケしているようだしそろそろ手を加えても良い頃合いだな」
この者は空気を読むことを知らない虫ですら怖気づくほどに悪意に満ちた顔をしていた。
するとこの者はOKの形をした指を地球に当て指を離し地球を拡大させるとそこにはこちらを見てたじろぐ人間が一人いた。
「おい!そこの人間!私のことが見えているのであろう?」
「おっ、おっ!うぉぉぉ!」
人間は超自然的な物を目にして激しく驚き尻餅をついた。
「あっ貴方様は一体?」
「神のような者と思えば良い。いきなりだがお前に大義を与えてやる。お前の行動次第で人間の運命が変わる。心して聞け!」
人間は今だに地に座ったまま立ち上がられずにいた。
「失礼ですが何を仰っているのですか?私めなどに大義など耐えられません」
人間は首を激しく横に振り必死の抵抗をしている。
「許さぬ。わしが一度決めたことは変えない。そなたに一つルールを与える。それは今後の食事の一切を禁ずる」
人間は目を大きく見開き驚愕といった顔をしている。
「そんな。それでは私は死んでしまうではないですか。あまりにも無茶ですよ」
「そなたが禁を破れば人類の歴史は途絶えることになる。私の期待に答えてくれよ人間」
この者は不気味に口角を上げていた。
その後この不運な男は一人で戦い続けた。現在の人々は与えられた大義に押しつぶされそうで周りからはおかしくなったと奇異の目を向けられた男の孤独な戦いはいざ知らず呑気に暮らしている。こうやって今暮らせているのは孤独な戦いに勝利したとある男のおかげなのに。
もしかしたら今もどこかで孤独な戦いを繰り広げている者がいるのかもしれない。たとえその功績が歴史に残らなくとも、人々の記憶に残るどころか知られていなくとも。
4/25/2024, 4:51:13 AM