イオリ

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君と一緒に

 例えるなら、ウォーレス・リードまたはジェームズ・ディーン。直感の正しさに浸りながら、撮影が進む。
 
 最後のメガホンに選んだ、二十歳の青年。恋、暴力、鬱屈。どのシーンも、こちらの声が届かぬ速さで、彼は走った。沸騰する若さを前に、いつの間にか声を掛けるのを止めていた。ただ見とれた。


 杖をついて独りで映画館に入った。客入りも良い。終わった後の表情も。

 最後に立ち上がり、館を出た。地面を叩く杖の音が、何度も何度も問いかけてくる。

 悔いだ。何もしていない。何もしていないじゃないか。彼が自分で光っただけ。
 
 もっといい画が撮れたはず。知識も経験もあったのに。心が手抜きした。

 杖を握る手に力がこもる。


 隙を作るな。杖先まで感覚を伸ばせ。再び灯ったこの炎で、次こそは彼を燃やし尽くせ。
 
 
 

1/6/2024, 11:12:43 PM