喜村

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 学年一位に、俺はなった。
 中学三年生の学期末テスト。夏休み目前のテストで、俺は念願の一位になった。

「あーぁ、越されちゃったか~」

 隣に座っているメガネをかけた女子が、彼女自身の成績表をひらつかせて声をかけてきた。

「あんたが一位なんでしょ?」
「なんで?」
「私が二位だから。万年二位だったあんたが上がったってことだよね?」

 彼女は文武両道という言葉がぴったりの完璧ウーマン。要領もよく、才色兼備ときた。
 少し薄い茶色の長髪を肩にかけなおし、ぽつりと一言続ける。

「おめでとう」

 俺は、彼女を追いかけていた。彼女は俺のスターだった。
 彼女に追い付きたくて、追い越したくて、その星に触れたくて。
 俺は無言で立ち上がり、彼女に向き直る。

「……て」
「え? 何?」
「俺と付き合って」

 学力は追い付いたかもしれないが、追い付いた先には次の目標が待っていた。
 この俺の発言への返答次第では、俺はまた星を追いかけていかなければいけない。
 星は輝き、俺に流れ星のようにふってきた。


【星を追いかけて】

7/21/2025, 10:28:00 AM