いぐあな

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300字小説

月夜の登校

 毎年、卒業式を終えた後の月夜に、学校の構内に生徒の影がさまようという。
 新しい生活に希望とともに向かう生徒もいれば、これまでの学校生活に留まりたい生徒もいる。そんな生徒の想いが影となって現れるのだ。
 クラスの隅に二、三人、肩を寄せ合いたたずむ生徒達。図書館でポツンと座っている生徒。思い切るかのように校庭をボールを蹴って走る生徒。そして……。
 保健室のベッドの上に座る生徒の影。保健室登校で卒業まで教室には行けなかった生徒だが、それでも学校が好きだったのだろうか。
 日を追うごとに生徒の影は薄くなり、一つ、また一つと消えていく。
 最後に保健室の生徒の影が消える。月の光が誰も居なくなった校舎を白白と照らした。

お題「月夜」

3/7/2024, 11:42:51 AM