『お祭り』2023.07.27
二年に一度開催される事務所のイベント。そのイベントを明日に控えて、タレント陣は浮き足立っている。
歌に芝居に寸劇。とにかく何でもありで、バカ騒ぎをしようというコンセプトのもと、この時期に開催されるのだ。
「社長、明日はよろしくお願いします」
関西訛りで彼が声をかけてくる。王子様風の衣装は、悔しいほど彼によく似合っていた。
彼は明日、自分の出演したミュージカルのナンバーを歌うらしい。王子様風の格好をしているのもそのためだ。彼と同級生の男が、絶対似合うからと鼻息を荒くしていたのを思い出す。
「似合うなぁ」
素直にそう褒めると、彼は肩を竦めてみせた。
「あのバカの趣味っすよ。アイツ、オレのファンなんで」
そう彼があのバカと指す男は、今年のイベントの主催である。主催なので何をしてもいいと思っているらしく、全編を通して己の趣味を優先しているのだ。
バカだとくさする彼も、自分が主催の時はミュージカル色全開だったので、似た者同士である。
「まぁ、そんなバカの祭りなんで別にええんやけど」
「そうそう。祭りじゃないと、そんないかにも王子様! って衣装は着ないよ」
二年に一度のバカの祭り。
この日限りは、無礼講。多少の悪ふざけも許される。
普段は厳しくしている僕も、彼らと一緒にこの祭りを楽しむつもりだ。
7/28/2023, 11:34:29 AM