「はい、あげる」
君はぶっきらぼうに僕の机に置いた。
「いらないよ、チョコ苦手だもん」
僕は答える。
「今もらっとかないと、いつかもらえなくなるよ」
「いいって」
あの頃から、君は達観していたと、僕は思い出す。
「いいから!」
君はそのまま足速に帰っていった。
しばらくしてから、周りが囃し立てる中、僕は袋を開けた。中を見てから、教室を出て君を探す。昇降口まできたが見つからなかった。
僕は形が揃ったその中から、少し乱れたものを袋から取り出した。口に入れたとたん、胸を熱くした。
それは歯ごたえよく、口の中を粉っぽくした。あるはずのない、チョコの風味がほんのりした。
2/14/2024, 11:39:02 PM