「二人ぼっち」
その日はお客さんが多く、厨房内はかなり厳しい状況だった。
ラストオーダーの時間を迎え、溜まっていたオーダーも次第に減っていく。
10分程して全て捌き終わった。
ただ、この時間で上がる人もいるため、厨房内は自分ともう一人だけになってしまった。
…何も締め作業が進んでいないのに。
お互い会話をすることなく、黙々と作業を進める。
そこからどれだけの時間がかかったのかはあまり覚えていないが、普段は厨房よりも締めに時間がかかるホールが、こちらより早く締め終わったらしい。
…そう、ついに私たちは二人ぼっちになった。
定時から1時間遅れでようやく締め終わり、二人でその日の労働を労った。
その人は自分よりも2年程先輩で、自分が業務関連以外では無言を貫いてきた新人時代に、心を開くきっかけになった人である。
正直この方がいなかったら、自分はここを既に辞めていただろう。
二人で他愛もない話をする時間。
他者と関わるのが苦手な自分でも、楽しいと思える。
色々話をしている途中で突然、その方が
「連絡先交換しません?」
という趣旨のことを言ってきた。
驚いた。
けど嬉しかった。
仕事ではあまりお役に立てていない自分でも、受け入れてくれた感じがした。
連絡先を交換してその日は帰宅した。
これだけでも個人的には満足だった。
―しかし、それだけでは終わらなかった。
帰宅して約30分後だろうか、その方から連絡が来た。
驚きと、こんなに自分に構ってくれているという事実とで、よく分からない感情になった。
なぜだろう。
その時、止まっていた人生の歯車が、また動き出したような気がした。
漠然と、"何か"が起こる気がする。
仕事は大変になるが、二人ぼっちも悪くないな。
…ありがとう。
3/22/2026, 9:55:19 AM