練習

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 部活終わり、下校時になって急な通り雨が降った。
「傘持ってねえー」
 隣で友人が呟く。中学からの付き合いだが、こいつが折りたたみ傘を用意周到に鞄に入れているところなど見たことがないので驚きはない。
 しかし、今日は俺も傘を忘れてしまった。普段入れている鞄の外ポケットを覗くが、見当たらないのだ。そう言えば昨日の夜コンビニに行く時に使って、玄関で干したままになっていた気がする。
「もしかして忘れた? 珍しいな」
 俺のしかめっ面を見て察した友人が、お前でも失敗するんだな、と言いたげにふっと笑う。
「人の傘あてにしてる奴に言われたくないんだけど」と冷ややかな目で言い返すと、
「あてにしてないもーん」と友人は言い「じゃ、走って帰るか!」と、いきなり雨の中に飛び出していった。
「え? いや、どうせすぐ止むんだから待とうぜ」
 俺の叫びなど聞こえないようで、その後ろ姿はどんどん遠のいていく。そしてちょっと先にある軒下に滑り込むと、早く来いよと手を振ってきた。
「いやいや……」
 ため息しか出ないが、こうなっては仕方がない。俺は鞄がなるべく濡れないようにブレザーを被せると、意を決して雨の中に飛び出した。不必要に濡れるのには反対だが、部活で汗を流した分、身体に打ち付ける雨が心地よいような気もした。

#通り雨

9/28/2023, 3:14:24 AM