ヨルガオ(短編小説)

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「…嵐が来る」

『…お前何言ってんだ。こんな良い天気なのに』

「だからだよ。嵐の前の静けさっていうでしょ」

「それに…匂いがする。雨と風の匂い」

『はいはい。お前の鼻がいいのはわかったからさ』

『さっさとウサギ採りに行こうぜ。俺腹が減ってよ』

「あ、まって。今日はもう帰ろう」

『危ないってか?俺は狼だぜ?』

『嵐が来たって、この爪と牙があるから大丈夫だ』

『お前だって、俺が集落一強いって事はわかるだろ?』

「そうだけど……」

『心配すんなって。夜までには帰るからさ』

『お前は早く家に帰って俺を待ってな』

「あ…………」


ー嵐が来ようともー

7/29/2023, 1:52:51 PM