『祈りの果て』―Link『心の迷路(前日作)』
………………夢を見た
見たのは あの「繰り返す夢」―――
また同じところから始まる
神社のような場所、
その真ん中の建物に自分が寝ていて
周りを見れば赤暗い空
その部屋の中にも外にも人が談笑して
友人や知人もそこにいた
さあ、そろそろ行こっか
この夢は、何回繰り返したか……
たぶん……10回は繰り返してる
まだギリギリ数えられそうだけど
そろそろカウントしてるどころじゃ
なくなってきた
だがここまで無収穫じゃない
幾つかわかったこと
このたった数分の出来事は
必ず同じ流れでループする。
この世界の全ては
自分の心や考え方の擬人化や
光景として変化したもの
あの赤い雷もなにかの本音が隠れていて
友人や知人、知らない人達でさえも
自分の何らかの気持ちや本音の擬人化
この後出てくる3人の祈祷師たち
あれも自分の何らかのための存在で
部屋にほとんど何も無いことさえも
私になにか伝えるためのヒント
殴りかかれないし
殴れてもビクともしない
持ってるものは奪えないし
壊すことも出来なかった
ループをする事 7、8回目の時、
私は光るかけらのようなものを手に入れた
赤い雷が鳴ったあと、
3人の祈祷師が現れ、友人たちは
その人たちの前で拝み、土下座をし、
そしてひとりの祈祷師の鏡の中に
紫色の煙に徐々に変化し、
その中に吸い込まれて行ってしまう……
吸い込まれ終わったその時、
右にいる祈祷師が
手に何かを持っていることに気がついた
それに気づいてすぐ手に取ると
……やはり来た、
そう、2人が吸い込まれたあとは
私はすぐに意識が急激になくなる
そうなる前に欠片に手を伸ばし
手中に収める
……どうだろう?
次目を覚ます時に……かけらが……
手にあれば………
いい…………………
けど……………………………………
―――――――――
――――――
―――
………………目を覚ます
まだ夢の中
同じことを繰り返されてる
手には…………かけらが
ふたつ
よし、一部は受け継がれてるらしい
けど使い方がわからない……
さあ、そろそろ行こっか
いつもの調子で発する言葉
とにかくダメ元で友人たちに掲げてみる
何も起こらない……
その後すぐに赤い雷がなる
また吸い込まれるのか……
だが何もしないよりはいい
赤い雷がなったあとは
自分も体が動きづらくなるが
どうにか動かし、もう一度
友人たちに欠片をかざしてみた
かけらは光だし、
友人たちそれぞれの胸元に宿されて行った
やった!
何が起こる!?
すると友人のひとりが
無表情のまま、泣き始めた
どうした!?なにがあった!?
ダメ元で話しかけてみたが
ポつりとひとつ、つぶやいた……
(……俺だって……本当は……)
そう言っていた
……本当は……?
そう言い残してまた煙に変わっていく
だが今度は紫じゃなくて
青色の煙に変わっていき
また鏡を持つ祈祷師の鏡に
吸い込まれて行ってしまった……
「――――――道は変わった」
!?
左にいる祈りの棒?を持った人が
口を開いた
道は変わった?
―
ここはお前を守る最後の砦のような場所
本音に近い場所だ
つまり、お前の我慢を溜め込んでいる場所
吸収できる量は毎日限られている
だがそれだけじゃない
ここにはお前自身の望みや夢といったのもまで
来てしまうようになってしまった
友人たちの形をしているのは
簡単に言えば望みや夢、些細な願いだが
それさえも優先的にここでは吸収される
吸収されたモノは取り出すことが難しい…
ここは辛さを消すところだが
同じように望みも一緒に消してしまう
お前は必ず持っておけ
持てるだけの望みを持ち
使って自分のチカラに変えろ
私から言えるのはそれだけだ
―
……どうしてこんな形で教えたの?
―
こうでもせんと
自分で自分に気づかない
次に会う時はまた違うかたちの
夢の輪廻で、会うことになるだろう
私はそうならないことを願うがな
―
…………
―
……ゆけ
お前の出口は
あの鏡の裏側にある
顔を近づけ、出ることを祈れ
ただし、望みを持つことを
それを叶えることを考えながら
そして二度と合わぬことを
私たちは切に願っている
ここはお前にとっても
そして皆にとっても、
辛い場所だからな
―
………………
話終えると、また蝋人形のように
固まってしまった
……いや、自分の役割に戻ったのだろうか
鏡の……裏側……
念の為、鏡の正面も確認したが
そこには白く濁った光景だけで
特に何も写し出していなかった
だがなぜか……
何も見えないはずなのに
なんとなく……寂しい気持ちになった
いこう、鏡の裏側を改めて確認した
そこには特に何も無く
丸い模様があるだけの
ただの背面でしか無かった
そこに向かって念じてみた
ここから出ることを、
望みや願いを持つことを、
そしてそれを……叶える自分の姿を
背面が光り出し
自分が白い煙に覆われていく
いや、白い煙に変わっていってるんだ
痛みも恐怖も何も無かった
その光の中に、
ゆっくり吸い込まれていく―――
―――――――――
――――――
―――
…………………………目が覚めた
現実、ベッドの上、肌寒い朝、
猫がお腹の上で寝ていて
喉を鳴らしこちらを見ている
軽くひと撫でしてから
抱っこしながら、私はため息をひとつ
机の上のパソコンを
ゆっくりと立ち上げ、
私は小さな勇気と空っぽの自信を持って
ひとつの作業に取り掛かった―――
あれから数週間
私はあのループする夢を見なくなった
〜シロツメ ナナシ〜
11/14/2025, 6:38:48 AM