草原に私は寝転んでいた。
風が吹くと草木が揺れ、私もまた転がっていく。先には大海が見える。
潮がひいた砂地に着いても止まらない。
動かない。このままだと海に落ちる。
でも、不思議と楽なのだ。眠いときみたいに無理に動かしても思うようにいかないのだ。
だから、別に良い気もしてくる。
水音が響く。あたりが夜みたいに変わって、息ができなくなる。海底にはたくさんの人がいた。皆寝転がっている。そのほとんどは、頭を欠いていたり、腕や脚がない。
でも、その顔は寝息が聞こえてきそうなほどに安らかだ。それで良いのではないか。
そう思った私を誰かが押しあげる。
顔を向けると、その中の一人が眼を開き腕をバンザイするみたいにして、私の身体を押していた。
「まだ」
そう聞こえた。私は必死に錆ついた身体を動かして、草原に戻っていった。
『風に身をまかせ』
5/15/2023, 10:13:30 AM