紗奈

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「たとえ間違いだったとしても、回答欄は全て埋めなさい。先生は皆さんに何度もこの言葉を伝えてきたと思います。」

卒業式の日、壇上に上がった先生はそう語りだした。

「回答欄が全て埋まれば、もしかしたら正解している問題があるかもしれない、部分点が貰えるかもしれない、だから埋めなさい、そう言ってきましたね」

「それは、この先の人生でも同じことです。」

「あなた方の人生はテストのように明確な正解のある問題ばかりではないでしょう、大きな壁にぶつかってしまう事もあるでしょう」

「壁にぶつかってもめげずに立ち向かって行きなさい、なんて言うつもりは無いです、他の道を探す、一度立ち止まってみる、時には逃げてしまうのも一つの手です。」

「たとえそれが間違いであっても、間違っていると言われても、これが自分にとっては正解だと胸を張って言える人になってください」

「私が3年間見てきたあなた方にはそれができる力があると私は確信しています。」

「長くなってしまいましたね、それでは皆さん、ご卒業おめでとうございます。」

そう締めくくった先生の目には少し涙が滲んでいた。



「…かつて私が学生の頃、恩師がこんな言葉を送ってくれました。」


先生、次は私がこの言葉を若い世代に教えていきます。

4/22/2024, 10:47:20 AM