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※BLです。苦手な方は飛ばしてください。













ふんわりと浮かぶ雲。柔らかな日差しが足元を照らしている。綺麗に色付いた花々が風に揺られて踊っているようにも見えた。
ひらひらと舞う蝶が、蜜を求めて彷徨っている。もしこの世界に楽園があるのなら、きっとこんな風に綺麗な景色が広がっているのだろう。
ゆっくり体を起こし、辺りを見回す。少し離れた先に見知った後ろ姿がいることに気がついた。
口を開きかけたと同時に振り向いたその人は、いつもと同じように口元に笑みを浮かべ、眩しそうに目を細めながらこちらを見る。
さくさくと草を踏み締め、ゆっくりと近づいてきたその人は、俺の傍にしゃがみ込んで視線を合わせてきた。
「なぁに、まだ寝ぼけてんの?」
くしゃりと優しく頭を撫でられ、その拍子に葉っぱがひらりと膝の上に落ちる。その葉っぱを少しの間見つめてから、まだ頭に乗っている腕を伝ってその人に視線を移した。
「ん?」
どうした?といつもより柔らかな笑みを浮かべる姿にトクリと心臓が跳ねる。優しげな声も手つきも、いつもとなにも変わらないのに、なぜだか泣きそうになった。
ああ、夢じゃないんだ。俺はここにいて、この人もここにいる。ずっと、手を伸ばしても届かないと思ってた。それでもこの人に追いつきたくて、隣に並びたくて。
やっと、やっと追いついたんだ。
「おはようございます」
俺もいつもと同じように笑い返す。この人の隣でこれから先もずっと笑っていたいと思うから。
傍にいられるのなら、それだけでいいんだ。他になにも望まない。周りにどんな言葉を投げかけられようが、どんな辛い場所に立とうが、この人が隣に居てくれるのなら、そこはもう俺たちだけの楽園だ。
下ろされた手を今度は俺から掴む。ぎゅっと強く握りしめて、温もりを確かめる。
俺よりも少しだけ冷たい手は、俺よりもずっと強く握り返してくれた。

5/1/2023, 12:08:32 AM