小絲さなこ

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「ファイト」


今日の出来事を、ひとつひとつ紡いでいく。
ぱたんと閉じた日記を引き出しに仕舞った。

通信端末の画面が光る。
これから仕事だという、彼からのスタンプがひとつ。
そうだ、今日は夜勤だと言っていた。


カーテンを開ける。
今夜は、月が見えない。




職場に以前から私に言い寄ってくる男がいる。
あまりにもしつこいので彼氏がいると言ったら、どんなヤツかとうるさい。
そこに通りがかった同僚が、私の彼のことをポロッと話してしまった。

「そんな付き合い、うまくいかないよ」
「絶対、浮気してるって」

嫌いだ。あの男も同僚も。


あぁ、もやもやする。彼に言ってしまいたい。
だけど、彼に伝えたところで、どうもできないだろう。

それぞれの夢を叶えるために、彼と私は遠距離恋愛を選択したのだ。


「ファイト!」と応援している猫のスタンプを彼に送る。

彼がこれを見るのは、たぶん明け方。




────眠りにつく前に

11/3/2024, 8:05:17 AM