彼女の部屋はワンルームだ。備え付けのベッドが部屋の半分を占めているし、キッチンのコンロは一つで、洗い場の隣はまな板すら満足に置けやしない。おまけに、換気扇の隣に設置された扉付きの棚はやけに高く彼女では到底届かないため、貴重な収納スペースだというのに完全に忘れ去られていた。
そんな部屋は俺には窮屈で仕方がないが、小柄な彼女にとってはそこまで不自由というわけでもないらしい。むしろあちらこちらへ物が散っていなくて助かるとまで言っていた。そんな風だから無理に連れ出すわけにもいかず、俺の方から時たまこの部屋に出向いているわけだ。
何度も訪れているうちに換気扇へ頭をぶつけることもなくなったし、ただ歩くだけでゴミ箱を蹴飛ばしてしまうこともなくなった。とはいえ、狭い浴室で壁に肘をぶつける頻度はなかなか減らない。縦も狭けりゃ横も狭く、こればかりは彼女も少し気に食わないとは思うらしい。掃除は楽なんだけどね、とのオマケ付きで。
またぶつけてたでしょうと微笑む彼女に甲斐甲斐しく髪を乾かされた後、ベッドになだれ込む。部屋の半分を占めているというのに、実際に乗ってみるとこれまた小さい。足がはみ出す。ふたり並ぶと寝返りも打てない始末だ。しかしまぁ、それを口実に彼女を抱きながら眠れるのは悪くない。
『狭い部屋』
6/4/2023, 2:16:05 PM