past love story by Lily

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腹の底から頭が爆発しそうなくらい怒ったことがある。
今思うと笑っちゃうくらいブチ切れてて、普段穏やかなわたしを知っている人にこれを話しても誰も信じてくれない。

頬の表情筋が痛いくらい楽しかった日々がある。
あんなに接客が楽しくて仕事仲間ともふざけあってて、それだけで成り立ってた日々が懐かしい。年を重ね淑女となった今、人と多く触れ合う接客は天職だと思ってた当時の自分は可愛かったなと思う。


少し前に、わたしは大切な人を亡くしてしまって四六時中泣いていた。
悲しみの表現として"涙が枯れるまで"というのがあるが、あれは嘘だ。涙は枯れない。枯れないどころか鼻水まで垂れてくる。鼻が詰まって息ができなくなって鼻をかんでも鼻呼吸ができなくて仕方なく涙は止まるのだ。そして鼻の具合が落ち着いた頃にまた涙は落ちる。


つい先日パートナーとカラオケでしこたま歌った。彼は喉で歌うので声量はあるがすぐにガラガラ声になる。
わたしはというと歌い出したら止まらない質なので、お気に入りの曲をたくさん歌ってしまう。それこそフリータイムの終盤は声が飛んで裏声なんて出ない。それでも可愛い曲が歌いたくて、意気揚々と挑むのだが気持ちのいいくらいどこかに飛んでいく。
ここぞ、の音程が外れてふたりで笑い転げる。言わずもがなその笑い声も飛んでいる。スナックのママみたいな笑い声だ。
これまで酸いも甘いも経験してきて、数え切れないくらい春も夏も、秋も冬も越えてきた。そこらへんの小娘よりは豊かな経験をしていると自負している。
でも世のスナックのママたちはわたしなんか比じゃないくらい沢山のことを経験して、色んなことを知ってるんだと思う。

たかがカラオケで声が飛んだ小娘と一緒にしてほしくないと思うが、人生経験豊富なスナックのママ風情になった夜、わたしは無敵モードに突入してそこらへんの小娘にくだを巻きたい気分だった。


◇声がかれるまで◇

10/21/2023, 3:47:32 PM