波にさらわれた手紙
書いた手紙は数え切れず
送った手紙は数えられず
人並みに文章が書けない私は今日もまた彼に向けて言葉を綴る
モテモテの彼は、手紙なんて貰い飽きてるだろう
なら、少しでも特別に
文字は丁寧に、文章はちょっぴり個性的に、絵を添え、梱包も最大限丁重に可愛く、より良く、より良くと何度やり直しただろうか
まだやり直したいが今日は旅立ちの日
今日渡さなければもう渡す機会はないだろう
どうせ最後だ、直接渡そう
機会を伺う.
機会を伺う..
機会を伺う...
キーンコーンカーンコーン
最後のチャイムがなってしまった
君は、他の子と話している
「最終下校の時刻になりました。忘れ物に注意し速やかに下校しなさい。」
まずい帰らされてしまう
最終日だけあって生徒が残りすぎていた
皆が同時に出される
私も君も他の皆も
君と私の間には人が多すぎる
追い抜けるほどの隙間もなかった
終わった...
家に着いてしまった
渡せてないのに
涙が出そうだが責める相手が私しかいない
終わったんだな、私の青春
あれだけ書き直した手紙は、
いとも容易く人波にさらわれた
8/3/2025, 10:04:32 AM