さらさら
ドームの天井まで届くような巨大な砂時計の前で、男が顔をしかめている。
砂時計からは金色の砂が細く細く、さらさらと流れ落ちている。
男は妻に尋ねる。
なあこれ、もう少し早くならないか?いっそ壊しちまっても…。
ダメよ、と妻はにべもなく言う。
誓いを立てたでしょ?砂が落ちきるまでは、このままにしておくって。
しょんぼり肩を落とす彼を、妻は優しく抱きしめる。
さあさあ向こうで瞑想を教えてちょうだい。その前にバター茶を淹れましょうか?それとも香油を塗りましょうか?
魅惑的な妻の誘いに、男は気を取り直して目を輝かせる。
男は破壊と再生を繰り返すシヴァ神、妻はパールヴァティー。
巨大な砂時計はこの世の時間で、さらさら流れ落ちるのは時の砂だ。
飽き性の彼が妻に宥められている間、どうにか世界は安泰のようだ。
5/29/2025, 2:26:16 AM