ほろ

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もう隣には誰もいない。
思えば、ここまでくるのに随分時間が過ぎた。
ぼくは長生きだけれど、人間は違う。ほんの数十年で朽ち果てる。
ぼくを好きだと言ってくれたあの子も、友達だと言ってくれたあの子も、息子のように扱ってくれたあの子もみんな、ぼくより先にいなくなってしまった。

「寂しいね」

しかし、何より恐ろしいのは、彼ら彼女らとの出会いと別れが、ぼくにとってはほんの数日程度の思い出にしかならないことだ。
数日が何百、何千人分。それは思い出と呼んでいいのだろうか。ぼくには分からない。
「君たちのところへ行きたいのに、行けない」
思い出なんて持っていたって意味がない。
隣には誰もいないのだから。
一瞬のように過ぎ去った日々を思い返したところで、みんなに触れられないのに。
ぼくはいつまで生きていればいいのだろう。

3/9/2024, 1:32:47 PM