Ayumu

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※軽くBL要素がありますのでご注意ください。

 こんな結末になるのはわかっていた。
「あの、おれ、なんて言えばいいのか」
「いいよ。気にすんなって」
 笑っていろ。こいつに余計な気をかけさせるな。しつこくなにがあったのか訊いてきたのだって「親友」の俺が心配でたまらないから、だから。うっかり隠し通せなかった俺が悪いんだ。
「ただ、そういう意味で好きになっちまったってだけだから。同じ気持ちになれっていう気はないし、これからも仲良くしてほしいからさ。もちろん、無理なら仕方ないけど」
 ダメだ、まともにこいつの顔が見られない。予想以上にダメージがでかくて、違う意味で笑えてきてしまう。全然覚悟決まってないじゃないか。
「……一人で、苦しんでたんだな」
 なんでお前が苦しそうなんだよ。全部俺の都合なんだ、お前には関係ない。
「お前のそんな顔、初めて見た」
 一瞬、呼吸が止まった。
 抱きしめられていた。そういう意味ではないとわかっていても、心臓がうるさくなるのを止められない。
「そりゃ、好きなやつに振られたら、当たり前だろ」
「そう、だな。おれも振られたときはそうだった。お前が見かねて慰めてくれたっけ」
「はは、あんときのお前顔めちゃくちゃだったな」
「いい加減忘れろよ」
 こいつなりの慰め方だと気づいて、自然と頬が緩んでいく。たぶん今、一生懸命考えまくって、言葉を選んでいるんだろうな。
「……おれを好きになってくれて、ありがとう。さっきはびっくりしっぱなしだったけど、お前の気持ちは、嬉しかった」
 背中にある両腕に力が込められていく。親愛の証だと充分に伝わってくるから、あたたかくて、苦い。
「おれにとってお前は一番大事な親友だっていうのは変わらないし、離れたくない。だから、これからもよろしく頼みたい」
「……熱烈な告白だな」
 無言の彼を不思議に思って抱擁を解くと、眉間にこれでもかと皺を寄せた顔と対面した。
「ばーか、なんて顔してんだよ。俺はこれからも仲良くしていきたいって言ったろ」
「ごめん……あ、ごめん」
 両方の頬を掴んで、軽く引っ張ってやる。
「泣くのは俺の役目だからな? お前は笑っとけ」
 たぶん俺はまだうまく笑えないから。
 つられて泣くのもいやだから、せめてお前は笑っていてくれ。


お題:スマイル

2/8/2023, 10:17:11 PM