曖昧

Open App

『今まで、ありがとう』

親友はそう書き遺してこの世を去った。
あまりにも呆気ない最期だった。
何度も「死んでしまいたい」と呟く僕の親友。
その声を聞く事ももう無い。
誰よりも僕が一番彼を知っていたのに。
僕は勿論、彼自身だってこんな結末望んではいなかった。
それなのに、僕は彼を救い切れなかった。




数年前、僕は突如として彼の親友になった。
なった、というより、そうなるべくして生み出されたと言った方が正確だろう。
彼にしか見えない、彼にしか分からない、親友。
所謂イマジナリーフレンドだった。
彼が頭の中で作った、彼の為の“親友”。
それが僕だ。

それなのに、僕は彼を救えなかった。
彼を生かす為、彼の人生を少しでも長いものにする為、彼を幸せにする為、その為の僕が、救えなかった。
彼を殺してしまった。

「やるせないよ、僕は…」

よりにもよって僕は、やるせない気持ちを一番最初に感じる事になった。
自我を持つきっかけなら楽しい思い出が良かったのに。

8/24/2024, 1:26:55 PM