是綴

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新流星と願い事/愛と平和

「永遠の愛と永遠の平和がもたらされますように」と流星に願ってみたら、「二つはちょっと、むずかしいです、どちらか一つにしてください」と夜空から声が降ってきた。
「じゃあ、平和で」と付け加えて願うと、今度は「あんまり、大きい平和は、むずかしくて……」と弱々しい声が降ってきた。

「君、もしかして新人……じゃない、新星なの?」
「ええそうです、すみません。まさか初めて受けた願い事がこんなに壮大なものとは思っていなくて」

流星はバツが悪そうにぽそぽそと言葉を紡いだ。哀れな流星。私が帰宅中「流れ星見れたから適当に何か願っとくか」とノリで願ったばっかりに。

「小さな平和ならいいのかな」
「そうですね、小さな平和……小さな平和、って、なんですかね、生まれたばかりなので、その、調べないと分からなくて」

うー、と唸る流星。新星は願い事の内容が分からなかった場合、「一旦持ち帰ります」が出来るのか……。唸る流星の声を聞きながら、私にとっての「小さな平和」を考える。生まれたばかりの流星にも叶えられるような規模の、小さな平和。

「思いついたよ」
「わあ、ありがとうございます。すみません、では、改めてお願いします」

流星はホッとした様子で私の願い事を待っている。


「……なるべく、定時で帰れますように」

3/10/2024, 2:58:57 PM