ゆかぽんたす

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ドキドキする時もわくわくする時も鼓動は高鳴る。
じゃあいったい、今の胸の鼓動は何の部類になるんだ。僕は手術室の前でただ立ち尽くしている。もうかれこれ、5時間くらいずっと。
キミが搬送されて、すぐに手術だと先生に言われた。それしか教えてもらえず、僕はただキミが出てくるのを待つことしかできない。なんでこうなったのか、考えれば考えるほど僕の心臓はどくどく音を鳴らす。加えて、どうしようという感情が更に鼓動の速さを加速させる。いつになったらキミに会えるんだ。僕がどうしたっていうんだ?こんな生地獄はもう沢山だ。早くこの緊張から解き放たれたい。

――ああ、そうか。この鼓動の正体は緊張か。それと他に、不安、絶望といったところか。僕は何に絶望してるんだ?キミのことをそんなふうに考えたくないのに。だけど弱気な心が僕の思考を蝕んでゆく。もしかしたら、なんて考えたくないのに最悪な事態を連想させる。嫌だ嫌だ嫌だと、何度も何度も頭を振っては正しい意識を取り戻す。頼む、どうか、神様。
それを思った瞬間に『手術中』のランプが消えた。ゆっくりと扉が開く。僕の心臓は人生史上1番の速度で駆け出している。両手の汗は尋常じゃなかった。先生が僕に近寄ってくる。マスクのせいで表情が分からない。

頼む、どうか、お願いだから――

9/9/2023, 1:51:10 AM