イブリ学校

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勝てる!
eスポーツ世界トーナメント準決勝、俺は意識が朦朧とする中、老けたシワを抱えたレジェンドを見た。レジェンドはコントローラーを重そうに持ちながら俯いている。視線を俺の画面に戻すとそこにはデュースを表す2-2の文字が点滅していた。

ゲームは所詮、有利不利の押し付け合い。そして、相手は歴戦のレジェンド、このゲームに関わってきた時間という絶対的な有利が存在していた。しかし、今0-2からの逆転デュースによって完全に観客たちの心を支配し勢いという圧倒的有利を俺は手にしていた。観客たちは今この瞬間も俺へのコールを続けていた。感謝の意を込めて手を上げれば声援は指揮者に従うように勢いを増した。

いける。
覆せる!時間という絶対的な有利を!

最終ラウンド開始に向けて俺はもう一度コントローラを握り直した。そしてレジェンドをもう一度見たとき俺は驚愕した。それはレジェンドがまるで疲れなど感じさせないような力強く落ち着いた様子でコントローラを持っていたからだった。ついさっきとは別人だった。
落ち着け今有利は俺にある。
そして、息をつく暇もなく最終ラウンドが始まった。
その瞬間レジェンドのとてつもない猛攻が襲いかかった。ガードするのが精一杯だった。俺が手を出せば一瞬でカウンターをもらいあっという間に壁際に追い込まれた。すべてを対策されていた。そして壁際で必死に攻撃を捌きながら、俺は

「レジェンドは敗北を予感して俯いていたのではなく、脳と手を休ませ対策をねっていた」

と悟っていた
そしてHPが半分を切った瞬間、レジェンドは冴え渡った読みを通し凄まじいコンボと必殺技を流れるように繰り出した。それは永遠に思える時間をゲームに費やさなければできない動きだった。
俺は自分の勘違いと弱さに絶望した。

その後、大会の全試合が終了したあとレジェンドは俺のもとに来てデュースに持ち込んだ時の気迫を褒めてくれた。そして一言、
「時間は若者の味方だ君はもっと強くなれる」
そう言って去っていった。

そして今、俺は老いたシワを抱え、時間という有利を振りかざし若者の前に立ちはだかっている。

レージェンド!レージェンド!レージェンド!

10/2/2023, 1:03:33 PM