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「今日は帰りが遅いね。部活に行ってたの?」

君が問いかける。
教室には僕と彼女の2人きり。

「君に会いたくて、ね。」

僕のこの答えに、君の顔が少し緊張したのがわかった。

「またまた、そんな冗談ばっかり言ってー」

君のその一言で少し空気が柔らかくなる。
でも、その言葉と同時に見せてくれた笑顔に僕は心を決めた。

「あのさ、夏に『やっぱり今言ったこと、忘れて』って言ったじゃない。あれ、やっぱりなし」

「…。それはどう言う意味?」

少し困った顔をしながら、君は少しの沈黙の後にそう言った。
そして、これから僕が何を言おうとしているのかを察して、
君は頬を赤らめた。
その少し困った顔も大好きだ。
その赤くなった頬も好きだ。
彼女の全てが愛おしい。
彼女への気持ちがとめどなく溢れてくる。
それと同時に、彼女が柔らかくした空気が、またピンと張り詰める。

「あれからずっと考えてた。でもダメなんだ。」

お互いの緊張が一気に高まる。
彼女への気持ちと同じように、僕の口からも次々と言葉が溢れ出す。

「やっぱり君のことが…」

鼓動が早く、大きくなる。
彼女に聞こえているのではないかと思うくらいの音で。

「やっぱり君の事が、ス、スキだ!!」

同時に廊下から入ってきた風が、教室の花瓶に刺さってるススキを揺らした。

そんな高3の秋。
放課後の教室で。




〜ススキ〜

11/11/2022, 10:04:48 AM