【星座】
「あれがオリオン座だろ?それであれがさそり座……」
キャンプの夜の醍醐味は焚き火を眺める静けさだってわかっている。
でも、俺はお前と黙って焚き火を楽しむほど人間ができていない。
2人きりに慣れない。
今夜、三十路の大人の男の余裕を見せたかったはずなのに、俺は浮ついた気持ちを夜空に向けていた。
ベラベラ喋り続ける俺にお前は文句一つ言わず、椅子にもたれて星空を見上げていた。
時折ビールを飲みながら。
焚き火の明かりは風に揺れて、お前の横顔に不規則な陰影をつくる。
美しい──そう、お前は美しい。
俺はお前の美しさに戸惑い、夜空に目を向けて喋り続けた。
知っている星座を言い尽くしたら、次は何を話したらいいんだろう。
「俺はお前のこと、ずっと前から──」
10/5/2023, 12:51:26 PM