「ベルの音はねぇ、わたしゃ嫌いなのよ!」
この時期になると、私みたいな女は皆んなソワソワしてこんな話ばっかりするのよ。確かに、家で独り楽しげなベルの音を聴くのは虚しいでしょうねぇ。同じ身として分からなくは無いわ。でもね、私の夫は特別なの。老女はそんな取り留めのないことを考えながら暖炉の前で編み物をしていた。
遠くから鈴の音がした気がして窓外に目をやれば、雪の中此方に舞い降りて来るひとつのソリが見えた。少しすると、わが家の玄関の扉が開き、冷気と共に貴方が帰って来た。
「いま帰ったよ」
「あら、お疲れ様。今年も早かったわね」
おーさむかった!とか呟きながら黒いブーツと真っ赤な服を脱いでいる彼に向かって声をかける。
「夕飯はもう出来てるわ、冷めないうちに一緒に食べましょ」
「おぉ!今年も豪華だね!」
嬉しそうな貴方をみて、私の頬も緩む。
ベルの音は好きよ、貴方が帰って来る音だもの。毎年他の同業者たちよりも早く帰って来てくれるの。
何故かって?あの人はね、クリスマスは私と一緒に過ごしたいからって、クリスマス前からプレゼントを配ってしまう"あわてんぼさん"なの。
【 ベルの音⠀】
12/20/2024, 11:32:11 AM