導(しるべ)

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「わぁ、綺麗。この子、澄んだ瞳をしていますね」
気配を消して掛けた言葉に、素っ頓狂な声を出して驚く彼が面白かった。
こういう人にはいたずらしたくなっちゃうんだよねぇと思いながら、人形を抱える。もちろん許可は取ってから。
陶器のような白い肌に美しく澄んだあんず色の瞳。
瞳の色が、切り揃えられた白髪によく似合っていた。
瞳はガラスでできていて三ヶ月ほどかかるけれど毎回海外から取り寄せていると聞いたときにはわざわざ三ヶ月も掛けて取り寄せる必要があるのかと疑問に思ったけれど、間近で見てみるとわざわざ取り寄せる必要が判るほどに美しい。
「この子の瞳、綺麗ですよね。…僕も、気に入っているんです」
彼を見ると、若草色の瞳を細めて微笑んでいた。
やっぱり、彼は人形のことになると感情が豊かになる。
「…そういえば、カタルさんの眼ってガラスアイ、ですよね?」
何かに気付いたように私の顔、特に瞳をじっくりと見つめる彼に、思わずたじたじになって後退りしてしまう。
それを追いかけるように彼は私の瞳をじっとみる。
だるまさんが転んだのようになり、遂には扉にぶつかる。
そのまま腰を下ろした私をみて、獲物を狙う猫のようにまた私の顔をじっくりと見つめる。
「…あのぉ……晶、くん?」
名前を呼ぶと、はっと我に帰ったように目を見開いた。
「ぁ…ごめんなさい……綺麗だったからつい…」
きれい、綺麗?私が?いや判ってはいたけど。自分でもこの眼綺麗だとは思うし。
しばらく彼は瞳をみつめて、ゆっくりと口を開いた。
「本当に、澄んだ綺麗な瞳をしてますね。人形の眼にしたいくらい」

7/30/2024, 11:24:26 AM