あーあ
重ねたアイスクリームの一番上の段がこぼれ落ちちまった
地面のアイスクリームを見つめながら、俺はもったいねえ、とだけ思った
いつもそうだ
俺が何かを得ようとすると、取りすぎちまうんだ
別に欲張りなわけじゃない
ただ、ちょうどいいと多すぎの境界線がわからないだけさ
これでも、自分にとって足りる分だけ得られれば、それでいいと思ってんだ
だが、その足りる分ってのを計る感覚が俺には欠如しているらしくてな
多いと思わず、少ないとも思わず、適切だとも思わず、なんとなく取った結果、過剰になっちまう
周りに指摘されたり、何かが起きてからようやく多すぎたと気づく
気づくだけで、どの程度が適切なのかは、全くわからないんだけどな
このアイスクリームだって、重ねすぎだなんてこれっぽっちも思わなかったんだぜ?
こぼれて初めて、ああやりすぎたんだな、とわかる程度さ
さらに、俺が得る側でなくても、適切かどうかわからない
ぼったくられても気づかないし、相手が求める以上に贈っちまう
仲間によると仕事も、自分で気づかず多くこなすことが頻繁にあるんだとさ
過労を心配されることもあるな
そう、俺は多さを感じられないんだ
だから、連中が人々から奪った金が多いのかどうかはわからねえ
俺が連中から奪った金が、連中が人々から奪った金より多くてもわからねえ
俺が連中から奪った金を、連中に金を奪われた人々に返す時、多めの金額になってもわからねえ
復讐に来た組織の連中が俺を囲んでいるが、その人数が果たして多いか少ないか、全くわからねえ
ただ、そんな俺にもわかることがひとつだけあるんだぜ
それはとても単純な事実だ
俺が連中ごときに負けるはずがねえってことだ
それだけわかってりゃ、何の問題もないのさ
そして、俺が今からぶちのめす連中の中で、最後のひとりになったやつ
そこまで頑張って立っていたご褒美だ
殴り倒して、地面にこぼれたアイスクリームを食わせてやる
砂利は混じっているが、味のよさは保証するぜ
このアイスクリームは溶けても美味いんだ
8/11/2025, 10:54:26 AM