非魔人対策本部

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お題「きらめき、開けないLINE」

「後輩の中だったら誰が1番可愛い?」
部活の帰り道親友の拓郎が言った。拓郎は昔から惚れっぽいところがある。最近は思春期なのか発情期なのかますます女の話ばかりだ。
「僕は厚井魔奈子って人かな」
とりあえず答える。魔奈子は僕たち弓道部の1つ下の後輩でそこそこ可愛い。しかも帰りの電車が同じで最近はなんとなく見られている気がする。意識せざるを得ない。今日もこれから同じ電車に乗る。
「魔奈子ちゃんか。可愛いよな〜。LINE交換してくれないかなー。」
拓郎が何か言っているが軽く無視した。というのも僕は魔奈子さんにLINEの友達追加してもらっているのだ。弓道部のグループLINEの中で何故か一方的に追加されている。こちらからも友達追加するのは少し恥ずかしかった。先輩のLINE全て追加したのかとも思ったが拓郎を追加していないということはそういうことなのかもしれない。拓郎が例外の可能性はあるが女の前で拓郎は紳士だからそれはないと思う。とにかく拓郎との会話を早々に終えて僕は魔奈子さんの待つ電車に乗り込む。乗り込むとすぐに魔奈子さんと目が合った。「これはもう恋愛ドラマとかにある確定演出だろ」心の中でそう思いながら窓に反射して見える彼女の姿を見ていた。どうやらかなり熱い眼差しでこちらを見ている。そんなに僕のことを。外の景色を見るふりをして僕は魔奈子さんを見つめていた。
電車がいつもの駅に着いた。僕の降りる駅は無人駅で普通車掌に定期券を見せて降りるが、最近は面倒で何も見せずに降りている。心の中で魔奈子さんに別れを告げいつも通り電車を降りると突然誰かに腕を掴まれた。驚きながら振り返るとそこには魔奈子さんの姿があった。「これはまさかこ、告白?。ありがとう。お母さん。お父さん。そして弓道部に誘ってくれた拓郎。お前は一生の親友だ」心の中でそう思った。そして彼女が何か言おうとする。「さぁ、こい。好きです。付き合ってください。だろ」僕の心は人生最高の瞬間を予感していた。しかし
「無賃乗車は犯罪です」
ん?何を言っているんだ?思考の停止した僕に車掌さんの足音が近づいていた。



駅から家への帰り道、星を見ながら僕は泣いていた。あの後定期券を見せ車掌さんはすぐに去ったが魔奈子さんはどうやら定期券の存在を知らなかったらしく、しばらく戸惑っていた。一応僕は軽く説明すると顔を赤くして謝り、すぐに電車に戻っていった。
「謝るのは僕の方だ。バカヤロー」
周りに誰もいないことを確認して川に向かって叫んだ。あの熱い眼差しは僕を犯罪者として見ていたのか。そう思うと涙が止まらない。LINEの追加もおそらく僕を注意するためなのだろう。スマホを川に投げ捨ててやろうとも思ったが、考え直し魔奈子さんに謝り、これをきっかけに友達になってもらおうとLINEを開いた。我ながら不屈の精神である。しかしLINEの友達追加欄に魔奈子さんの名前がない。
僕は何も言わずスマホを叩き割り川に捨てていた。

9/5/2024, 6:45:08 AM