komaikaya

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 誰もいない自習室で。突っ伏して寝ている俺の横に、いつの間にか彼女が座っていた。

 顔を上げなくたってわかるくらいには、彼女の香りも気配も覚えている、それはお互いにそうで。
 が、それ以上距離を縮めることが出来ない、それは俺と彼女が、ヘンなところで似たもの同士なせいだった。

「……ズルい、なあ」

 寝ている俺の横で彼女は、そう独り言ち──いやそのセリフ、そっくりそのままお前に返すけどな?
 お互いに、相手が決定的なことばをくれるのを待ってる、とか……先に言ったほうが負け? それって、なんのマウント?

 狸寝入りを続ける俺の髪に、彼女の指が絡むのを感じる。なんとなくそれにイラついた俺は、咄嗟に彼女の手首を掴んだ。

「わ、びっくりした! 起きてたの?」
「………………」

 彼女の問いを無視して、俺は彼女に向かい合うようにして起き上がった。
 彼女の手は掴んだまま、その手をじっ、と見つめてみる。

 あーあ、イマイチ頭が働かねぇ……ん、待てよ?
 俺はいま、寝ぼけてて……例えばこんなことしたって、たぶん許されるんじゃね?

「っ! ちょ、んっ、なに?」

 ぐい、と彼女の手を寄せて、その手のひらにキスをして。細く冷たい指先が驚いて引こうとするのを阻止しながら、ついばむようなキスを何度か繰り返し、そして──。

「なっなによ、なんなの、これはっ?」
「えー? えーと……なんだと思う?」

 振り解いた手でバシッ、と俺の頭をはたいた彼女が、自習室を出てゆく。

 チェッ、なんだよ、そんなにビビんなくたっていいじゃねーか。
 俺だって、こんなふうに──誰かになにかを渡したくなったのは、これが初めてだったんだぞ?



 少し後で学食に行くと、自分の手のひらをぼんやりと見つめている、彼女がいて──それを見つけた俺は、思わず顔がニヤけそうになった。
 フフッ、してやったり……さぁて、こっからだな?

 彼女にやった『手のひらの贈り物』──その感想を俺は、どうやって問い詰めてやればいいだろう?

12/20/2025, 9:45:35 AM