バスクララ

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穏やかな時間が永遠に続くと思っていた。
俺は一生をあの村で終えると思っていた。
それなのになんでだろうね。急にあなたは選ばれし者だとか王様が呼んでますよとか言われてさ。
ほとんど無理やり故郷を旅立って、勇者だとか英雄だとかとちやほやされて、望んでないのに魔王の討伐まで願われてさ。
逃げたかった。いやだって言いたかった。だけど故郷を人質に取られてるも当然だから、拒否権なんてものはハナからなくてさ。
集められた仲間と共にやっとこさっとこ魔王を倒して凱旋したらこれまでよりももっとちやほやされてさ。
ようやく俺に興味がなくなって、久々に自由を手に入れて、故郷に帰ってきたんだ。
そうしたら故郷は全く別物になっててさ。
神みたいに俺を崇め奉ってる友達と俺に縋り付いてくる親……。
俺の欲しかったもの、大切なものはもう手に入ることはないんだなって絶望した。
……だからさ、今度はあいつらの欲しいものや大切なものを永遠に俺が壊してやるって決めたんだ。
そうこうしてたら魔王とか言われてさ。
笑っちゃうよな。あいつらこそ魔王に相応しいのに。
なあ勇者。お前もそう思うだろ?
……魔王の戯言だって? まあそう言うなよ。
死に際に嘘なんか吐くわけないさ。

11/1/2024, 4:04:41 PM