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キャンバスに向き合い、ひたすらに絵の具を重ねていく。ひたすらに、脳内にある情景を描き出していく。
ちがう、ちがう、こんなものではない。
僕の頭の中にある景色はもっときれいなのに、どうしてこんなにも汚い色になるのだろう。
何度も、何度も、色を重ねていく。頭の中の景色は言葉では言い表せないほどきれいで、おだやかで、すばらしいものなのに。どうしてキャンバスの上にある景色はこんなにも汚いのだろう。朝も夜も忘れ、食べる間も眠る間も惜しみ、ひたすらに絵の具を重ねていく。
ああ、景色が遠のいて、最後に見たのは、ずっと求めていた景色そのものだった。

9/14/2024, 11:51:26 AM