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『約束』

約束したじゃん、なんて君が涙を浮かべながら呟いた。
ごめんね、なんて謝ろうとした声も、君の涙を拭おうとした手も、全ては思いどおりにならないまま君の涙が頬を伝うのを眺める。
少し冷えた君の手が僕の手を包んだ。
「一緒に幸せになってくれるんじゃないの?君の名字くれるんじゃないの?死ぬときは一緒なんじゃないの?」
溢れた涙が上から降り注ぐ。
病に冒された身体が、それでも力を振り絞って声帯を震わせる。
「ごめんね。守れなくて」
かさかさに掠れ果てた声でも君には届いたみたいだった。
君の嗚咽が大きくなって、そのまま膝から崩れ落ちる。
君を傷つけるくらいなら約束なんてするんじゃなかった、なんてやけに場違いか感想だけが脳をよぎった。

3/4/2025, 11:21:02 AM