ことり

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小さい頃、夜にやっていた音楽番組に出ていたバンドのボーカルに一目惚れした。少し低くて落ち着く声。でもまっすぐな歌は確かに私を貫いた。その日から私はひたすらに歌を歌い続けた。高校生になってバンドを組んで、あの人を超えるような歌を探し続けた。しかし、この世界は甘く無い。いくら歌っても誰も見向きはしない。現実が深く心につき刺さる。どうせ、このまたなら続けても意味ないや、と思ってしまった。そんな時、私に声をかけてくれた人がいた。少しの高揚と浮き足たった様子で、えと、あの、と繰り返す。その人は深呼吸をしてからキラキラした目で、私あなたの歌に一目惚れしました!と言った。その目はあの日の私と同じだった。憧れをいっぱいに詰めた眩しい瞳。お礼を言おうとすると涙が溢れる。嬉しかった、今までで一番だ。泣き始めた私を見て慌てるその人に、涙を拭いながらありがとうと何度も繰り返して言った。

数年後、私はあの頃よりもずっと広いステージで歌っていた。しかし私の目指す場所からはまだまだ遠い。それでもあの日を胸に歌い続ける。
いつか夜空で一番明るいシリウスよりも眩しい星になる日まで。どうか私を見ていてね。

12/14/2025, 1:06:19 PM