「パラレルワールド」
私と彼はコロナ禍の前に
旅先で出会った
私は仕事の有給休暇を使い
京都に行き彼と出会ったのだ
私はその時
会社の中の恋愛で疲れていた
そんな事もあり、傷心旅行で京都に旅をしていた
彼から見たら私はどう写ったのだろうか
彼は清水寺の景色のいい場所で
私に話しかけた
「僕のスマホで僕を撮ってくれませんか」
私は「いいですよ」と答えた
彼のスマホ越しに見える
清水寺からの景色は本当に素晴らしかった
一番いい景色を捉えると
彼と一緒にスマホカメラで撮った
「ありがとうございます」
彼はそう言うと少し視線を落として私に言った
「実は僕は彼女に振られたんですよ」
私は答えた方が良いと判断した
「実は私もなんです(笑)」
彼は「そうなんですか!奇遇ですね」と言った
私は「ここからの景色は綺麗ですね」と言い
しばらく何気ない話をした
彼は愛知県に住んでいると言った
私は神奈川県だ
お互いの事を話しているうちに
私はひょっとしたらと言う気持ちが湧いたが
彼とはそれ以来、会っていなかった
それから、半年が経ち
世の中はコロナ禍で大変な事態に陥っていた
外に出られない
仕事もリモートワーク
人と全く話さない日も増えた
私は京都で会ったあの人の事を
思い出していた
そんなある日
ふと、インスタグラムを見ていたら
あの日の私が撮った写真を
アップロードしている彼がいた
「あ!声をかけよう!」と思って
コメントを記入した
「京都旅行は楽しかったでしょうか
この写真を撮った者です
お元気でしたか」
今、その彼とは穏やかな関わりを続けている
熱量のある恋人同士ではないけど
日々のあった事や
悩みを言ったり
聞いたりする仲になった
コロナ禍だからネットの中で私達は話した
遠距離親友と言ったところか
時計の針は彼も私も同時に進む
時間が前に進むものなら
穏やかに柔らかい時間を過ごしたい
自分が消耗する恋愛はもう出来ない
恋愛は頑張るものではない
彼はいつしか
遠距離友達から
特別な人になっていた
そして、コロナ禍が過ぎた頃
彼から1枚の葉書が届いた
「結婚を前提にお付き合いしてください」
私は早速、とっておきの葉書を選び
ペンをとった
9/25/2025, 10:10:02 PM