すばる

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声を枯らしたことは、生きてきた中で一度もない。
枯れ果てるまで泣き腫らしたことも、ひたむきに叫び散らしたことも、何かに対して懸命になったこともないからだ。
それは自業自得の怠惰なのだろうか。怠けの証左なのだろうか。
こうして大人と呼ばれる歳になってからも、この自問自答は時折目の前に現れて行き止まりの壁を作り出す。
しかし、私はその壁を自らどうこうしようとは思わない。壁から少し離れたところに腰を下ろし、ただじっと待つのだ。
むやみやたらと張り付いた末、取っ掛かりも見つからないまま背中から落っこちては大惨事。かといって、今は何の手立てもないのだからどうしようもないのだ。
両脚を抱えて、膝頭に頬杖をつきながら、人生の大きな壁がいつの間にかいなくなるのを待つ。
いつか私もなりふり構わず壁をぶち壊そうとする日が来るのだろうか、などと思いながら。

/声が枯れるまで

10/22/2022, 9:15:59 AM