はた織

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 香魂という麗しい言葉がこの世にありながら、習慣を持たぬけだもの以下の生命体に怒りを感じる人間界が憎たらしい。
 夜露に濡れ朝露に散る、自然の清く正しくおそるべき循環の中で生み出された言の葉を、よくもまあ踏み潰して唾を吐き出して知らないと簡単に言えよう。
 朝日と共に起きもせず、人から借りた本を返しもせず、自らの無知を無知と認めもせずにいたから、言葉も習慣も知識も知らぬ人間以下のけだもの以下の肥溜め以下の微生物にもなれぬ“何か”に陥るのだ。恥知らずの人間のほうが、まだ生命体としての価値がある喜びを知るがいい。
 無知が故に無恥の私は、香魂の文字の味を知るのに忙しない。子どもの胃の中に収めたかった言葉と出会って、噛み締めて飲み込んで、ようやく恥じらいを覚えたばかりだ。私のたましいに刻み込まねばならない言葉は、この世に至る所に溢れている。その言葉が今見えていないのは、ただ知らないだけだ愚か者よ。
            (250609 どうしてこの世界は)

6/9/2025, 12:58:13 PM