komaikaya

Open App

 暗黒に飲み込まれようとしている、この世界で。
 神が我らにその存在を示した『たった1つの希望』──すなわち、神託が選んだ聖女は他でもない、貴女様なのです。
 さあ、この世の暗黒たる魔王を討ち果たすべく、いざ共に参りましょう!



「……無理」

「……え?」

「いま、無理だから。とっとと帰って」

「っ、そんな! 貴女様がいなければ、世界は!」

「いまワタシがいなくなれば、この店は! 空腹に耐えかねた冒険者たちがそれこそ、魔物の群れのように暴れ回るでしょうよ! 見てわかんない? いまちょうど満席になって、料理の注文がドカンと入ってきたトコなんだから!」

「え……あの、でも、」

「うーるさーいっ! 集中して作りたいの、話なら後にして! ヒマならそこの鍋とフライパン、洗っといて!」

「はっ、はい!」




「えええ? いまそこに伸びてる中年のオッサン……相手の状況をこれっぽっちも見れない、洗い物もろくに出来なくて使えなかったコイツ、いやこの方が、本当に王弟殿下で? しかも、魔王討伐のためのパーティーを率いる、勇者だって? 大体さぁ、食堂のオバチャン、って呼ばれてるワタシが聖女って、神託がどうかしてるとしか、」

「手をかざして「ヒール」と唱えてみてください」

「はぁ。……ヒール」

「……はっ。私はいったい……あっそうだ、とにかく鍋を洗わねば、」

「殿下、気がつかれてよかったです。ほら、貴女様の呪文でちゃんと、回復しましたよね?」

「えええ……ワタシに、こんな力があるなんて。ってか、こんなオッサンとオバチャンのパーティーって、」

「ちなみに魔法使い様も同年代ですのでご安心を」

「なにをどう安心しろと?」

3/3/2026, 9:52:04 AM