すごくしょうもないことで喧嘩して、私は家を飛び出した。
君のところ以外になんて行く当てもなくて、なんとなくやって来た街をふらふらと彷徨う。
つまらない喧嘩が後に引けなくなって、もうあとはただの意地で、君の顔を見られなくなっている。本当は、すぐに家に帰って、「ごめんね」って言えばいいだけなのに。
冬の空はすぐに太陽を隠してしまって、太陽の光でどうにか暖かさを保っていた街はすぐに冷たくなって、吹いた風が体の芯まで冷やしていく。
寒さが身に染みて、情けないことに、涙まで溢れてきた。涙を拭いたくても、指先がかじかんで、上手く動かせない。
「何を泣いてるの」
突然聞き慣れた声が後ろからして、私は振り返る。
そこには呆れた顔をした君が立っていた。
「あ……」
思わず一歩後退る。
君はそんなことなんて気にせず、私の腕を掴んだ。
「帰るよ」
腕を掴んだまま、ずんずんと先を歩いていく。
怒ってるよね?
「……あの……なんで余計に泣いてるの?」
君がまた振り返った。今度は少し困惑した顔。
「ごめんねぇ……」
泣きながら謝る私の頭を、君は優しく撫でた。
「……こっちこそ、ごめん」
そう言って、今度は腕じゃなく、手をそっと握ってきた。
寒さで凍えていたはずの体は、絡んだ指先から温かくなっていく。まるで呪いが解けるかのように、ゆっくりと動き出す。
「帰ろう」
『街へ』
1/28/2026, 10:24:38 PM