人さがし

Open App

─最悪─

今の僕の感情を表すなら、『最悪』だ。

漫画でしか見たことない。余命宣告をされた。
残り1ヶ月だってさ。短いなぁ、本当。
やりたいこと、一応まだあったんだけどなぁ。
1ヶ月じゃあ何も出来やしない。

───余命宣告を受けて一週間ぐらいかな?
隣のベッドで寝ていた奥さんが亡くなった。
そこには中3ぐらいの子もいた。
でもその子、他の人が出ていっても、病室から出ていかないんだ。

『おい、そこの嬢ちゃん。どうした?』
「...。」
『他の人はもうどっか言ったぞ?それとも悲しいのか?』
「...。」

一向に喋らないその子が口を開いたのは、数分後だった。
「...あなたの才能、譲って貰えませんか。」
...そう来たか。でも一体何のために?
『別にもう生きらんねぇからいいが、何でだ?』
生きられないと言う言葉に少し反応した。

「...私、出来損ないだから。何にも才能ないの。だから譲って。」
...思っていたより、この子は大人だなぁ。
「酷いこと言ってるのは分かってる。」
生きられない人に譲って貰うのは可笑しいって、と付け加えた。

『...まぁいいさ。その代わり、ちゃんと頭で考えて使えよ。』
ぱぁっと顔が明るくなった少女は、近くに駆け寄り手を握った。
その瞬間、自分の中から何かが無くなった気がした。
少女は「ありがとう!」と残し、帰っていった。

『変わりに、大切に使ってくれよ。嬢ちゃん。』


このお話は昨日書いた話の続きです。
手を握ることによって、相手の才能を貰うことができる世界の話です。
ただ、相手も自分も了承した場合のみ、才能を貰うことができます。
珍しく新しい世界観で書いてみたのですが、変じゃないですかね...。
以上、作者より

6/6/2023, 2:08:44 PM