真岡 入雲

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ジリジリと肌を焼かれる感覚
顳かみから滝のように流れる汗
屈んだままの膝は痛く
足もそろそろ痺れてきた

「何で、今やらなきゃいけないの?」

その問いに答えてくれる人はいない
ただ生ぬるい風が吹き抜けていくだけ

「暑いよぅ」

口にすれば余計に暑く
己で発した言葉に後悔する

一週間残業をしてやっとの事で休みをもぎ取った。
実家に着いたのが二時間前で、着いたそうそう着替えを渡され、麦わら帽子と軍手と鎌と虫除けスプレー
そしてタオルと凍ったペットボトルと一緒に、ここ、一族のお墓に連行された。

「クソ兄貴!」

車で私を置き去りにした人物に悪態をつく。
明日の墓参り前に綺麗にしておかないといけないって、それはわかる。
けど、何で私が?
私、さっき帰ってきたばっかりなんですけど?
ってか

「暑ーい」

田舎の墓ってやつは無駄に広く山の中にある。
かく言う我が家の墓もご多分にもれず広い。
虫に食われるので長袖長ズボン長靴の完全防御で、草が生え放題の墓と格闘すること一時間。
渡されたペットボトルは半分以上が空だ。

「ったく、お兄ちゃんがきちんと草むしりしてれば、こんなに草ぼうぼうにならなかったはずじゃんか」

昨年までは母親が定期的に草むしりをしていたらしい。
が、この春父の転勤で一緒に海の向こうへ飛んで行ってしまった。
ちょいちょい送られてくるLINEを見る限り、随分と楽しくやっているようで良かったけれど。
とりあえず、とっとと終わらせて家で涼みたい。
草を抜いて、刈って移動して、時折大きな蜘蛛や、名前の知らない虫と格闘して、ペットボトルの水が無くなった頃に草刈りも終了した。

「あぁぁぁ、終わったぁ」

あとは墓石を綺麗にして⋯⋯。

「バケツが無い!水も無い!」

キョロキョロと辺りを見回して、少し離れた所に水道の蛇口とバケツらしきものを発見。
仕方がないが歩いて向かう。
相変わらず汗は滝のように出てくる。
首周りも背中もウエストも汗でびちょびちょだ。
このままでは倒れるかもしれない。

「はぁ、気持ちいい」

バケツに溜めた水に手を浸し、タオルも一緒に濡らす。
さて、あと少しだ、頑張れ私!
たっぷりと水を汲んだバケツを汗だくになりながら運び、浸したタオルで墓石に水をかける。

「あっつい!」

黒い墓石は太陽の熱を含んで、卵が焼けそうなくらいに熱い。
タオルで拭いた傍から、水があっという間に蒸発していく。
でも、私に残された体力は少ない。
手を止めることなく墓石を拭きあげ、残ったバケツの水を墓石の上からかけて全ての作業は終了した。

「おわった⋯⋯」

早く涼みたいし、シャワーを浴びたい。
私をここに置き去りにした人物に連絡をすべくスマホを⋯⋯。

「うそでしょう⋯⋯」

着替えた時にスマホを持ってくるのを忘れた。
ポケットを叩いても、服をパタパタさせてもスマホは出てこない。
しょんぼりと肩を落として、空になったペットボトルに飲めない水を入れ、濡らしたタオルを首に巻いて、徒歩三十分の実家を目指す。
ジリジリと肌を焼く太陽を背負って、緩やかな下りの道をひとり歩く。
願わくば、気を利かせたクソ兄貴が迎えに来てくれますように。



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(´-ι_-`) 毎日暑いデスネー

8/7/2024, 8:05:44 AM