【心の迷路】
ああ、まただ、と思う。
しあわせだなぁなんて思ったから。
あの時、晩夏の夕暮れ、
くっきりとした山の稜線とオレンジの空を見上げて
わたしの周りで今、泣いている人がいなくて、
依存されることもなくて、
卑下されることも、嘲笑されることも妬まれることもなくて、
寂しさに打ちのめされているひとも、
いのちの危機にあるひともいない、
大切な人たちが、とりあえず、
自分の力で立ち、自分の感情をたいせつに、
夕方まできっと穏やかに過ごせているだろうことが、
しあわせだなぁなんて思ったから。
押し寄せる安堵に涙があふれた。
止められないほど泣いた。
まさかこんなことになるなんて。
しあわせだなんて思わなければ。
思っちゃだめだって気づけばよかったのに。
11/12/2025, 11:21:20 AM